2025年のWEB制作環境・メンテナンスを振り返る。

2025年のWEB制作環境・メンテナンスを振り返る。

2025年、昭和100年は激動の年でした。色々と新しいことが起きたのは良いのですが手を回しきれないほど多く、「スタンダード」が定まらなかったのが辛かったです。

弊社としては引き続き

  • WordPressベースの制作
  • ソースの一元化とデータベース的価値の重視
  • カレンダーの活用

を三本柱としながら、各種新技術やメディアを試してきました。

生成AIの影響

ChatGPTに始まった生成AIブーム。あまりにも多岐に亘る分野で話題になっています。今のところ、華やかに見えるのは

  • AI画像と動画
  • 検索サイトのAIまとめ
  • (プログラムの)コーディング補助
  • 文書作成

といったところでしょう。

WEB業界で影響が大きいのは「AIまとめ」と言われています。該当サイトにアクセスすることなく、学習したAIがサイトトップに「答えを整理して提供してしまう」ために、特にアフィリエイトサイトの被害は甚大です。

例:「wordpressでおすすめのカレンダー機能を教えて」

検索結果「すべて」にAIの回答が表示されます。

例:「角煮のレシピを教えて」

検索結果「すべて」にはサイト候補が表示されます。

「AIモード」にして初めてAIによるまとめが表示されます。

Googleも表示方法について試行錯誤中なのでしょうか?

これまでのSEO対策は崩壊したとまで言われていますが、アフィリエイトサイトではない企業サイトの場合はやはり真っ当なSEO対策をしていかなければなりません。

「AIに勝手に学習されるのは拒否したいが、検索順位は上げて訪問して欲しい」というあまりにも当たり前な要望への対策が定まるには、もう少し時間がかかりそうです。

生成AI画像・動画について

SNSでよく見る、例えば熊を小さな猫が追い払うような、巨大な女性がヨットから海に飛び込んだら大波でヨットが沈むようなお笑い動画。良くできた物は実写と見紛うともありますね。

昔のアニメの実写版(ぽい)もの、昔の妖怪のCG等々。権利関係が発生するといやなので引用はしませんが、すぐにたくさん見つかります。

正直なところ食傷気味です。

「誰でもお手軽にできるようになる」「新しいアイディアが生まれる」という流れは確かにあります。今は過渡期です。玉石混淆でしょう。

しかしコストが高すぎます。

直接的には、一般向けメモリ・SSDが枯渇するほどです。異常な電力消費の問題もあります。

利用者には無料で提供されているものが多数ありますが、まわりまわってコスト負担をしていることを忘れてはなりません。

本記事のトップ画像にはあえて生成AI画像を使ってみましたが、この品質を高めていくのに時間を使うならイラストを描いたり写真を撮ることに精力を費やしたいと思います。

Windows10サポート終了

2025年の最大ニュースと言えば、こちらさが先に来るべきでしょう。Windows10、2025年10月14日でついにサポート終了。ただし一般向けには無料で1年間のサポート継続オプションあり(手続きが必要)。

ほとんどのお客様は年初からWindows11への移行を始めていました。当然、前年までに完了している方も多くいます。

しかし年末時点で7、10を複数台使用中のお客様もいらっしゃいました。

  • 業務用アプリの都合で7しか使えない。
  • 8は嫌いなので入れなかった。
  • 11の画面が嫌いで、微妙に違う使い方を覚えるのがイヤ。
  • 予算を組んでいない。

業務用アプリはバージョンアップしようにも開発元が無くなっていたり、様々な問題があるため責めることはできません。せめてネット(インターネット・社内LANとも)から切り離されたスタンドアローンであれば多少は良いのですが…。「メールも必要だから」と、しっかりインターネットに接続されています。怖いなあ。

一番多い「Windows11にしない理由」は「まだ動いて、今のところ問題ないから」でした。

問題が起きてからでは手遅れなんですけどねえ。

ただしWindows11にしても、Microsoftによるアップデートの不具合が多発した年でもありました。「11にすれば大丈夫!」と思っていた矢先に、Officeが全消滅したり、PCが起動しなくなったり、Outlookがメールを受信しなくなったりという症状が多数ありました。幸い、データのほとんどはNAS(ネットワークHDD)に保存してあったため被害は最小限でしたが、進行真っ最中でローカルに保存していたデータがお釈迦になった事例もありました。

  • 自動アップデートの停止が不可能になった。
  • OneDriveの強要がしつこくなった。動作が身勝手な上に、無料版では5GBしかなく、現実的なフルバックアップには対応していないくせに半端にデータを持って行ってしまう。絶対に使いたくないアプリの筆頭。
  • Outlookの設定方法がころころ変わって、マニュアルが役に立たない。同じ設定画面を出すのにアプローチ方法によって設定可能項目が異なっている。
  • Microsoft365の実質的な大幅値上げ。AI機能を使わなければ必要無いアップデート。

Linuxの勧め

Windows10サポート終了を機にLinuxへの乗り換えのお勧めを強化しているのですが、やはり性急にはうまくいきません。社内で委員会を作ったり、試しに1〜2年程度は使ってみないと納得できないでしょう。

メリット

  • 基本的に無料です。
  • Office、サイト閲覧、メールについては定番アプリがあります。具体的にはChromeが使えます。
  • 画像処理等についても、かんたんなものであればあまり困りません。IllustratorやPhotoshopのような高度なアプリが必要な場合、使い勝手は違いますが同等機能のアプリを無料で使えます。
  • システムが強固で、不明な動作をすることはまずありません。
  • 低性能のPCを流用できます。

デメリット

  • Windowsとは画面が違います。
  • 日本語入力設定に少し手間取るかもしれません。設定してしまえばWindowsと同様に使えます。
  • 官庁のネット申請など、一部対応しないサイトがあります。「Windows10のChrome、MacのSafariのみ対応」と明記されたサイトがままあります。
  • 業務用アプリはほとんど移行できません。

特殊な用途のPCのみWindowsを利用し、事務・営業用PCはLinuxに置き換えてしまえばかなりのコスト削減が見込めます。携帯用のノートPCにもインストール可能です。

Linuxには色々な種類があり、それぞれ使用法が微妙に異なるのも導入の妨げになっていますが、今のところLinux Mintが主流のようです。動作も軽く、Windows10がなんとか使える程度のマシンで快適に動作します。

ソーシャルクラッキング激増

ソーシャルクラッキングとは、人間関係を利用した乗っ取り(等)のことです。広い意味ではフィッシングメールも含まれるかもしれません。

ソーシャルクラッキングというと、古いことをご存じの方は

  • パスワードを書いたメモを盗み見る。
  • 指紋を採取して手袋に造形し、認証を突破する。
  • 免許証を偽造する。
  • 変装(!?)して玄関を突破する。

というイメージかもしれませんね?

現在は

  • 総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)でパスワードを取得する。
  • 放置されたSNSを乗っ取り、友人からのメッセージを装って次の被害者を探す。
  • WhatsApp等を騙ったメッセージやSMSで二段階認証を突破する。
  • フィッシングメールでパスワードを入力させる。

等の手法が多くとられています。

2006年3月21日、Twitterで最初のつぶやきが投稿されてから20年。消えていったSNSもたくさんありますが、それ以上に「試しに作ったけれど放置したまま」というアカウントが数知れずあります。当初は二段階認証など無く、パスワードさえ突破してしまえば乗っ取り放題です。友人とはつながったまま。犯人は友人を次のターゲットにするでしょう。

「どうせ使わないから放置」はいけません。所有権を確認し、セキュリティを設定するなり廃止するなりすべきです。

Gmail・メールについて

2024年はSPF・DKIM・DMARKの設定必須化が話題でした。現在、ほとんどのメールサーバは対応しています。

これはGoogleが主導して始められた「スパムメール減少のための方策」で、各社とも倣いました。当初は学校から試験に関する案内がGmailアカウントに届かない等の大問題が起きましたが、最終的には良い結果をもたらしていると思います。

※注:送信者である大学がSPF・DKIMを設定していないメールサーバから重要な案内メールを送ったため、Gmailサーバが受信を拒否した事件。急な話ではなかったため、大学側ネットワーク管理者の落ち度と思える。

2025年末には、GmailによるPOPメールの取り込みが終了します。「メール受信の主流がIMAPになってきたから」というのがGoogleの言い分ですが、多分にコスト面の問題が大きいように思えます。2月にはGoogle reCAPTCHAの料金大幅改訂を行っていますし、直接課金に収益構造を転換しつつあるのかもしれませんね。

GmailでPOPメールの取り込みを利用している場合、対処が必要です。ご注意ください。

Gmailは以下のようなメリットがあり、多くの人に使われています。

  • 無料でアカウント作成できる。アカウントの使い捨ても容易。
  • スマホでの閲覧の容易さ。
  • 無料15GBという大容量で、メールをサーバに置いたままにするIMAP形式でも無理なく使える。
  • IMAPなので、複数の端末からいつでも送受信メールとも確認できる。
  • 他と比べて極度に優秀な迷惑メールフィルタ。

弊社はそのメリットを理解した上で、旧来のPOP3受信を重要視しています。

  • 「受信したメールをサーバから削除する」「7日後」といった設定を行えば、複数端末でメールを確認できる。
  • Gmailにも転送しておくことで、スマホでもメール閲覧が手軽にできる。
  • Gmailの無料15GBは大容量に見えるが、Googleドライブと共用での容量。
  • 添付ファイルが多い職場の場合15GBでは足りず、有料化せざるを得ない。
  • メールサーバを変更したい場合、IMAP形式のデータを移行するのには大変な手間がかかる。
  • すでに溜めてしまった大量のメールの整理は、IMAPよりもPOP3が早い。
  • IMAPにはメールバックアップの手段が存在しない。

実際、1998年2月2日に受信したメールが弊社では問題無く現在のMacメールに受け継がれています。当時のメーラーはEUDORAでした。

バックアップ・システム移行に柔軟に対応できることは、PCを業務で使う上でもっと重要視されるべきと考えています。しかしGmailは便利に走り過ぎている気がします。そのため主メールアカウントとしては利用しません。

アプリの値上げとAffinity Studio

ある意味、2025年最大のニュース!!!

Adobe Illustrator・Photoshop・InDesignと同様の機能を持つAffinityが、Affinity Studioとなって無料化されました。ver 1・2を購入したユーザーには無料フォントの提供というオマケ付きです。Canvaが買収したことで実現したこの製品、AI機能をフルに使うにはCanvaの有料ユーザーとなる必要がありますが、基本機能だけで相当なことができます。そもそも全員がAI生成を使うわけじゃないですし。

  • 当然ですが、画面が違います。
  • ツールの機能が違います。
  • 互いにできることできないことがあります。
  • Studioの名の通り、線画・ビットマップ・レイアウトを1つのアプリの中で行き来するスタイルは慣れが必要です。
  • Photoshopに相当するAffinity Photoのフィルタは、メニュー階層が深くPhotoshopに比べて不便です。
  • Illustratorに相当するAffinity Designerは縦書きに対応していません。
  • Lightroomに相当するアプリはありません。
  • Lightroomについては、別途無料のDarktableを使うという選択肢があります。しかしこのアプリ、なぜかiPhone RAWに対応していません。今後も対応しないような口ぶりです。

2026年早々、弊社はAdobe CCの更新を迎えます。このタイミングで一度Adobeから離れてみようか…と思ったのですが、なんとも間の悪いことに「Illustratorによる縦書きDTPの仕事」が入ってしまいました(ありがたい)。

完全移行にはまだ時間がかかりそうです。

Adobe CCは、AI機能がフルに使えるProと制限付きのスタンダードになりました。旧来の機能はスタンダードで使えます。放置して自動更新してしまうと高額なProになってしまうため、事前にスタンダードへ切り替えることを強くお勧めします。

スマホ新法

メインとなるのは「AppStore以外のアプリストアを許可し、競争を促進し、開発者の利益を守り、ユーザーの利便性を高める」ということです。EUに倣って日本でも導入、しかしEUでは大失敗に近い状況のようです。

そりゃそうだ。「小さな穴を許せばそれを広げるヤツが必ず現れる」からです。

2026年はスマホ地獄とも呼べる状況が起こるかもしれません。興味本位でダウンロードしたアプリから、個人情報の流出、乗っ取り、データ破壊、ストーキング。なんでも考えられます。

これまでのAppleが完璧だったとは言いませんが、提供者の義務を必死に果たしていたと思います(その分しっかり稼いでいたけれど)。

恐ろしいです。

それでは良いお年を。

 

この記事は2025/12/29に公開され、0 views読まれました。

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